前回に引き続き、2つ目の事例をご紹介します。
②有名超能力者によるスプーン曲げ
1970~1980年代、一世を風靡した”超能力者”がいました。わたしは当時あまりTV番組を見ていませんでしたが、それでもその”超能力者”のことは知っていました。
調べてみると透視やテレパシーといった能力も披露していたようですが、有名なのは何といってもスプーン曲げでしょう。これは念力に分類される能力だと思いますが、彼のスプーン曲げはいわゆる超能力なのでしょうか?
スプーン曲げという事象は、後に何人かのマジシャンがトリックによって再現可能だと公言しています。ですので、「トリックによってこの”超能力者”が見せていたのと”同じ結果”を再現することができる」のは事実と考えて良いでしょう。
しかし、トリックによって同じ事象を再現できることと、この”超能力者”がトリックによってスプーンを曲げていたとすることは同義ではありません(論理的に等価ではない)。
つまり、トリックで再現できるというだけでこの”超能力”を否定するのは早計で、力技によらないでスプーンが曲がるという同じ「結果」に到達する「過程」が、トリックの場合もあればいわゆる”超能力”の場合もあり得る、ということです。
(本当にこのような超能力が存在するのであればです)
スプーン曲げを行っている映像を当時見た記憶は残っていないのですが、2010年代に行われたパフォーマンスの映像を見ると、
・自身で用意したスプーンを使用(映像で見る限りは通常のスプーンのようにも見えるが、映像だけでは判断不可)
・曲がる位置とスプーンの先を頻繁に触っている
・軽い力とは言え、曲がる位置(支点)で支え、スプーンの先(力点)を前後方向に力を加えている
というものでした。
念力という言葉からは「物理的には触れずに物を動かす」という事象をわたしは想像してしまいますが、このパフォーマンスは
①もしこれが本物の超能力である場合
「一般的に想像される力よりも弱い力で物を動かす(曲げる)ことができる」能力
②仮にトリックだった場合
「一般的に想像される力よりも弱い力で物を動かした(曲げた)ように見せる」能力
ということになります。
仮に①の”本物の超能力”だったとしても、「想像される力よりも弱い力で物を動かす」という見せ方は、パフォーマンスとしてかなり弱いと感じるのは私だけでしょうか?
ここで、彼の超能力が本物であると仮定します。
そして例えば、スプーンが曲がるのに必要な力を100、彼が念力で物を動かせる力が70だとします。
この場合、念力の70だけではスプーンを曲げることができないので、物理的な指の力を30加えることによって
「一般的に想像される力(100)よりも弱い力(30)でスプーンを曲げた」
というパフォーマンスを行っている、と推測してみます。
■スプーンが曲がるのに必要な力・・・100
念力の能力(70)+物理的な指の力(30)によってスプーンを曲げている
(観客からは30の力だけでスプーンが曲がっているように見える)
また、他にも2010年代の番組で”絶対に曲がらない”と謳う強度の高いスプーンを曲げることに挑戦していましたが、このスプーンは曲げることができなかったという結果が残っています(この番組は私もリアルタイムで観ていました)。
この番組からは、
・彼自身が用意したスプーンで無くても曲げることができる、と彼自身は考えている(そうでなくてはこの番組への出演を断ると考えられるため)
・しかし結果として強度の高いスプーンは本人の予想に反して曲げることはできなかった
と推測できます。
これも「念力の能力(70)は存在するが、物理的な指の力(例えば目一杯の力:仮に200とする)を加えても、強度の高いスプーンを曲げるのに必要な力(例えば500程度)に及ばなかった」
と考えると、彼のパフォーマンスのやり方から逸れてはいませんし、念力の存在を否定するまでの結果では無いとも言えます。
■スプーンが曲がるのに必要な力・・・500
念力の能力(70)+物理的な指の力(200)を加えても、スプーンは曲がらなかった
(念力は存在するがそれでもスプーンが固すぎて曲がらなかった、と捉えることもできる)
しかしです。このスプーン曲げという方法は「超能力を持っている」ということを示す方法として適切でしょうか?
例えば曲げるのに100の力が必要なスプーンでは無く、50の力で曲がるような他の物を使用して、念力の能力(70)のみで物を曲げるパフォーマンスを行った方が良いのではないでしょうか。
■物体が曲がるのに必要な力・・・50
念力の能力(70)のみ(物理的な指の力無し(0))によって物体を曲げる
視聴者が見たいのは、もしくは超能力を懐疑的に見ている人に能力があることを示すために必要なのは、「物理的な力が働かない状態(0)であるにも関わらず物が動く」ことであって、「思ったより弱めの力で物が動く」ことでは無いと思うのです。
もし本当に超能力を世に示したいのであれば、仮にわたしだったらそれを示せる道を探ると思いました。
みなさんはどう捉えますでしょうか。
ただ1つ言えるのは、”超能力”が本物かどうかという観点を脇へ置いておくと、この”超能力者”はスプーン曲げというパフォーマンスを通して世界中にワクワク感を振りまいたスゴイ人物だと思います。
世界を股にかけ、会場やTVの前の子供たち・大人たちの目も輝かせたということは事実だと思うのです。
さて、ここまでスプーン曲げに関して否定的な見解を示したように見えてしまうかもしれませんが、わたしは、念力に関しては別の事例によって、確信とまではいきませんが存在することをかなり信じています。
この話はまた後ほど述べさせていただこうと思います。
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